自治体ごとの渓流盛土に関する安定計算の記載の違い


 (2025年12月24日調べ現在)  国が示した「盛土等防災マニュアル」は「技術的助言」なので、自治体は参考にしてもしなくてもよく、独自の技術基準を作ることになる。当然、『盛土等防災マニュアルの解説』は技術的助言の解説本に過ぎないので、自治体は参考にしてもしなくても良い。国がこれらに従うように求めることはできない。だからこそ自治体の力量が試される。
 (感想)
令和6年度(2025年3月末まで)に作成された技術基準は、基本的に『盛土等防災マニュアルの解説』通りとなっていて、実際運用した際の不具合の検討がなされていない。とりあえず作っただけ、という感じ。
・令和7年度の夏以降に創られた技術基準は、静岡県の逢初川土石流災害原因検討報告書の内容を反映して3次元浸透流解析で算定するのが不可能だと正しく認識され、3次元浸透流解析に言及せず盛土高から決定する現実的な方法論を採用する傾向がみられる。
・地震時の過剰間隙水圧発生や、繰り返し載荷による強度低下などは関西圏と福岡が認識している。逆に静岡・神奈川県には地震時の問題意識がない。逢初川が降雨による災害だったから、地震への思いが欠けたのだろうと思う。
・ただし、同じことが地下水がほぼ例外なく豊富にある既存盛土(主として第二次スクリーニングが終わった宅地盛土)にも言えることを認識している自治体は皆無。盛土は残土処分目的でも宅地目的でも、同じ挙動となる。宅地は宅地、残土は残土と別個にして思考を切り離しているところが大半だと思われる。自然を人間の勝手な解釈で理解してはいけない。自然を舐めてはいけない。
3次元解析は2次元解析の正当性をチェックするために用いるという目的を掲げているところが多い。ただし具体的な方法が書かれているわけではないので、まだ3次元解析の意味がよくわかっていないようだ。3次元変形解析(有限要素法)で検証することの意味がわかっている自治体は多分ひとつもない。3次元有限要素法の場合、結局、せん断強度低減法(SSR)で滑り面形状をあぶり出して2次元解析の滑り面と比べるのだから、極限平衡法の3次元安定解析のほうがよほど合理的。極限平衡法なら2次元法と3次元法で解析メソッドを合わせることも容易だ。盛土の安定性評価が2次元極限平衡法の安定計算だけでなく、2次元有限要素法(変形解析)でも評価して良いとなれば、3次元変形解析でのチェックも意味を持つことになるが、現時点では極限平衡法のみである。
・また、地震時の過剰間隙水圧発生や、強度低下を考慮した場合、滑り面強度が横断的に異なることになるので、2次元解析では原理的に解けない問題になるが、それを認識している自治体は皆無。強度低下が起きる場合には設計変更することとしている自治体は現実的。ただし、その検証(特に過剰間隙水圧が発生しない担保)をどうするのかが極めて重要だが、その重要性を認識している自治体は皆無。(このことは、鴨川メガソーラーの有識者委員会の座長に就任された釜井俊孝先生なら指摘しそう)
・残土盛土をしようとすれば、谷にしたほうが効率的なので、渓流盛土は必然的に多くなるし、小規模な盛土では残土処分地としてはあまり意味がないはずだが、技術的な審査方法がまだ確立されているとは言えない。自治体職員は長期間専従にして専門性を高めないと・・・(ゼネラリストに解決できる問題ではない)。
・時間の経過とともに良い技術基準が生まれている傾向が認められる。今の状態だと、自治体ごとに差が大きく、まだまだ混乱は続きそう・・・。重要な問題を無視し回避して、『盛土と防災マニュアルの解説』を形式的になぞって申請を通し、その後の検証(地下水処理等の確認)も怠った盛土の多くは危険盛土になるかもしれない。無降雨時に暗渠管から基底流量(地域差はあるが概ね10~20リットル/秒/km2に流域面積を乗じた値)を大きく下回る水量しか排出できない盛土(渓流盛土に限らず既存宅地盛土も含む全ての盛土)は、暗渠管が十分に機能していない可能性が高いので危険盛土と判定していいかもしれない。
・愛媛県の「指導」では「3次元浸透流解析が少なくとも必要」とのことである。愛媛県の技術基準には「望ましい」と記載されているだけであるから、逢初川の最終報告書などを示して「技術的に不必要であること」を説明するのがコンサルとしては賢明だが、甲乙の立場の違いにより「望ましい=必須」となる場合が多々あるようである。これは他の都道府県にも言えることかもしれない。

自治体名  渓流における盛土の安定計算に関する記述を中心にとりまとめ
※見落としがあると思いますので各自で確認してください
 記 事
 静岡県
令和7年11月版
https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/068/121/1024/03_gijututekikijun3.pdf
・安定計算は、円弧滑り面法のうち簡易なフェレニウス式(簡便法)によることを標準とし行うこと。
・最小安全率は以下によること。常時地震時Fs≧1.5 Fs≧1.0 設計水平震度 0.25
・安定計算に用いる土質定数は、現場に即した定数とするものとし、試験等により適切に設定すること。
湧水や常時流水等が認められる渓流等や傾斜地盤上等の盛土については、盛土内に発生する間隙水圧として、静水圧を見込むものとし地下水の設定水位は盛土高の3分の1とすること。
多量の湧水等があり、集水性が高い地形である等の場合には、地下水の設定水位を盛土高の2分の1とすること。
・渓流等における盛土高さ15mを超え、盛土量50,000m3を超える盛土であり、かつ、直下に集落等が存在する場合には、崩壊発生時の社会的影響度が多大であること等を踏まえ、安定計算に加え、三次元解析による多面的な検証の必要性を検討する。検討の結果、計画地において三次元性を考慮すべきと判断された場合には、三次元解析を実施し、盛土の安定性に関する多角的な検証を行う。

・フェレニウス法が標準はいただけない

地下水位設定は盛土高に対して行う

3次元法での検討が必要かどうかを検討し、必要な場合にのみ実施する

地震時の過剰間隙水圧に関しての記述はない
 神奈川県
令和7年12月4日時点
 https://www.pref.kanagawa.jp/documents/113935/moridomanyuaru312.pdf
・渓流等における盛土:安定計算を行い、最小安全率(Fs)が常時 1.5以上、地震時 1.0以上であることを確認すること。このとき設計水平震度は kh=0.25 とすること。
1)安定計算 盛土のり面の安定性は、円弧滑り面法による検討を標準とする。また、円弧滑り面法のうち簡便なフェレニウス式(簡便法)を標準とするが、現地状況等に応じて他の適切な安定計算式を用いること。
2)設計土質定数 安定計算に用いる粘着力(c)及び内部摩擦角(φ)の設定は、盛土に使用する土を用いて、現場含水比及び現場の締固め度に近い状態で供試体を作成し、せん断試験を行うことにより求めることを原則とする。 また、元の地盤についても土質調査を行い、必要な設計土質定数を求めることとする。
3)間隙水圧 湧水や常時流水等が認められる傾斜地盤上の盛土は、盛土内に発生する間隙水圧として、静水圧を見込むものとし、地下水の設定水位は盛土高の3分の1とする(多量の湧水等があり、集水性が高い地形である場合等は、地下水の設定水位を盛土高の2分の1で検討する)。
大規模な盛土は、二次元の安定計算に加え、三次元の変形解析や浸透流解析等(以下「三次元解析」という。)により多角的に検証を行うことが望ましい。
 静岡県と同様に合理的な方法だが、3次元解析については『盛土等防災マニュアルの解説』のまま

地震時の過剰間隙水圧の記述はない
 広島県
令和5年9月
 盛土規制法に関する許可の基準
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/550379.pdf
(ア)より詳細な地質調査、盛土材料調査、土質試験等を行った上で二次元の安定計算を実施し、基礎地盤を含む盛土の安全性を確保しなければならない。
(イ)間げき水圧を考慮した安定計算を標準とする。
(ウ)液状化判定等を実施する。
(エ)渓二次元の安定計算に加え、三次元の変形解析や浸透流解析等(以下「三次元解析」と いう。)により多角的に検証を行うことが望ましい。
 『盛土等防災マニュアルの解説』のまま
 東京都
令和5年1月時点案
 https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/toshiseibi/pdf_bosai_takuzou_pdf_th07_kijyun03
『盛土等防災マニュアルの解説』のまま
(盛土高が15mを超え、盛土量が5万m3超となる場合) [盛土高が15mを超える場合]に示す措置を基本とするが、盛土量が5万m3超となる場合は、二次元の安定計算に加え、三次元解析(変形解析や浸透流解析等)により、二次元の安定計算モデルや計算結果(滑り面の発生位置等)の妥当性について検証することが望ましい。
 『盛土等防災マニュアルの解説』のまま
 大阪府
令和7年5月
 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/63067/2025sekkeishishin.pdf
3次元解析に関する記載はない
擁壁に特化している 
(探せてないだけかもしれない)
 未検討と思われる
それらしきものが見つからない
 兵庫県
令和7年4月
 宅地造成及び特定盛土等規制法による 宅地造成等技術マニュアル
https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks29/documents/takuchi_techmanual_202504.pdf
(1)盛土高さ15m超かつ盛土量5万m3以下の場合は、間げき水圧を考慮するとともに、地震時の間げき水圧の上昇及び繰り返し載荷による土の強度低下の有無を判定した上で、「(8) 盛土又は切土の安定性の検討」に示す方法により盛土の安定性を検討する。
(2)盛土高さが15mを超えかつ盛土量が5万m3を超える場合においては、三次元解析(浸透流解、析変形解析及び地震動)、液状化判定等により多角的に安全性を確認する。
(3)地震時における盛土の強度低下の有無については、「盛土等防災マニュアルの解説(盛土等防災研究会 編集)」、「道路土工-軟弱地盤対策工指針(日本道路協会)」を参考として、軟弱地盤 盛土材料に応じて適切に土質試験を実施することにより判定する。試験の結果、盛土の強度低下が生じると判定された場合は、強度低下が生じない盛土となるよう設計条件の変更を行い、液状化等による強度低下が生じない設計とする。
(4)渓流等において、盛土高さが15mを超える盛土を行う場合は、学識経験者の意見聴取を行い、その意見を反映した計画とする。
地震時の過剰間隙水圧考慮+土の強度低下の有無の判定

3次元解析は『盛土等防災マニュアルの解説』のまま

液状化による強度低下が生じない設計を要求

学識経験者による担保
 京都府
令和6年6月6日
 盛土規制法に基づく 許可制度の手引
https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000332/332743/moridokiseihou_tebiki.pdf
審査基準7 渓流等における盛土に係る技術的基準
渓流等における盛土は、盛土内にまで地下水が上昇しやすく、崩壊発生時の渓流を流下し大規模な災害となりうることから、慎重な計画が必要であり、極力避ける必要がある。やむを得ず、渓流等に対し盛土を行う場合には、通常の盛土等の基準(「京都市開発技術基準」第12章造成計画)に加えて、別表12の措置を講ずることとする。
・間げき水圧を考慮した安定計算を実施することを標準とする。
地震時の間げき水圧の上昇及び繰返し載荷による盛土の強度低下の有無を判定し、強度低下が生じると判定された場合は、盛土の強度低下を考慮した安定計算を行う。
・盛土規模が大きく数多くのリスク要因(地盤・地下水・地震動等)が盛土の安定性に大きな影響を与えることになるため、三次元解析(変形解析や浸透流解析等)により二次元の安定計算モデルや計算結果(滑り面の発生位置等)の妥当性について検証する。
・三次元解析のための詳細な地質調査及び水文調査を追加で実施する。
・盛土高さ15メートル超であり、盛土量50,000立法メートル超の盛土については、三次元浸透流解析により、流出量及び暗渠排水の仕様について精査すること。
渓流盛土は極力避けること、とされている。

地震時の過剰間隙水圧強度低下を検討する。

3次元解析で二次元計算の妥当性を検証。

暗渠の仕様は3次元浸透流解析で精査すること。
 奈良県
令和7年2月
 宅地造成及び特定盛土等規制法に関する 運用の手引き 技術基準編
https://www.pref.nara.jp/secure/318127/R7.12kaitei_gijutukijunnhenn.pdf
(1)より詳細な地質調査、盛土材料調査、土質試験等を行った上で二次元の安定計算を実施し、基礎地盤を含む盛土の安定性を確保しなければならない。
(2)間げき水圧を考慮した安定計算を標準とする。(「Ⅴ・3・2 盛土のり面の安定性の検討」を参照)
(3)液状化判定等を実施する。(「Ⅴ・3・2 盛土のり面の安定性の検討」を参照)
(4)大規模な盛土は、二次元の安定計算に加え、三次元の変形解析や浸透流解析等(以下「三次元解析」という。)により多角的に検証を行うことが望ましい。<解説欄>盛土規模が大きく数多くのリスク要因(地盤・地下水・地震動等)が盛土の安定性に大きな影響を与えるため、三次元解析(変形解析・浸透流解析・液状化判定等)により二次元の安定計算モデルや計算結果の妥当性について検証することが望ましい。
 『盛土等防災マニュアルの解説』のまま
 福岡県
令和7年10月
 技術基準 第1章 地盤に関する技術的基準 [PDFファイル/222KB]
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/266414.pdf
・盛土基礎地盤及び周辺斜面を対象とした地質調査、盛土材料調査、土質試験などを行った上で二次元の安定計算を実施し、基礎地盤を含む盛土の安定性を確保すること
地震時における盛土内の間隙水圧の上昇繰り返し載荷による盛土強度低下の有無を判定するために必要な土質試験を表1-2により実施すること。
・盛土の強度低下が生じると判定された場合、強度低下が生じない盛土となるよう設計条件(盛土形状・盛土材料等)の変更を行うこと。やむを得ない事情がある場合に限り、液状化や繰り返し載荷による盛土の強度低下を考慮した安定計算を実施すること。
・表1-4より、間隙水圧を考慮した安定計算を実施すること。ただし、地震時の安定性の検討において、液状化や繰り返し載荷による盛土の強度低下を考慮した安定計算を実施する場合は、この限りでない
・(留意事項)盛土量が5万m3超となる場合は、二次元の安定計算に加え、三次元解析(変形解析や浸透流解析等)により、二次元の安定計算モデルや計算結果(滑り面の発生位置等)の妥当性について検証する必要がある。
・基礎地盤を含む盛土の安定形を確保すること。

地震時の過剰間隙水圧、繰り返し載荷による強度低下を検討すること。強度低下しないようにすること

3次元解析は2次元解析結果の妥当性検証に使うこと
 山梨県
令和7年4月
 盛土規制法に基づく許可申請等の手引き【技術的基準編】
https://www.pref.yamanashi.jp/documents/117739/tebiki250401_gijutsutekikijun.pdf
・大規模な盛土は、二次元の安定計算に加え、三次元の変形解析や浸透流解析等(以下「三次元解析」という。)により多角的に検証を行うことが望ましい。
・高さ15 メートルを超え、かつ5万立⽅メートルを超える盛土は、崩壊発生時の社会的影響度が多大であることを踏まえ、三次元解析により多角的に盛土の安定性を検証する。そのため、詳細な地質調査及び水文調査を追加で実施する。
 『盛土等防災マニュアルの解説』のまま

ただ、調査を追加で実施することが「概念的に」求められている
 千葉県
令和7年4月
 盛土規制法に係る手引
https://www.pref.chiba.lg.jp/takuchi/morido/documents/moridotebiki.pdf
盛土量が5万m3超となる場合は、三次元解析(変形解析や浸透流解析等)により、二次元の安定計算モデルや計算結果(滑り面の発生位置等)の妥当性について検証することが望ましい。渓流等は、常時流水の有無にかかわらず地表水や地下水が集中しやすく、施工した盛土が万一崩壊した場合に土石流化するおそれがある地形であり、渓流及びそれに接する集水地形(ゼロ次谷等)の総称である。
 『盛土等防災マニュアルの解説』のまま
 和歌山県
令和7年5月26日初版
 盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法) に関する技術的基準(PDF)
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/080900/tebiki_yousiki_d/fil/gijyutukijyun.pdf
・渓流等における高さ15mを超える盛土は、間げき水圧を考慮した安定計算を標準とする。安定計算に当たっては、盛土の下部又は側方からの浸透水による水圧を間げき水圧とし、必要に応じて、雨水の浸透によって形成される地下水による間げき水圧及び盛土施工に伴って発生する過剰間げき水圧を考慮すること。
・渓流等における高さ 15m超の盛土につい ては液状化現象を考慮し、液状化判定等を実施する。
地震時における盛土内の間げき水圧の上昇や繰り返し載荷による盛土強度低下の有無を判定するために必要な土質試験を表 1(11)-1 により実施すること。
・盛土の強度低下が生じると判定された場合、強度低下が生じない盛土となるよう設計条件(盛土形状・盛土材料等)の変更を行うこと。
・やむを得ない事情がある場合に限り、液状化や繰り返し載荷による盛土の強度低下を考慮した安定計算を実施すること。
・盛土量が 5万m3 超となる場合は、二次元の安定計算に加え、三次元解析(変形解析や浸透流解析等)により、二次元の安定計算モデルや計算結果(滑り面の発生位置等)の妥当性について検証することが望ましい。
・盛土下部、側方からの浸透水による水圧を間隙水圧とする
雨水浸透の地下水を考慮する
地震時の過剰間隙水圧や繰り返し載荷の強度低下の有無を判定
・強度低下が生じないように設計変更
3次元解析は2次元解析結果の妥当性検証に使うこと
 滋賀県
令和7年4月時点
 技術的基準_第1章(地盤) (PDF:4 MB)
https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5529920.pdf
・間げき水圧を考慮した安定計算を実施すること。
地震時における盛土内の間げき水圧の上昇や繰り返し載荷による盛土強度低下の有無を判 定するために必要な土質試験を表1-8-1により実施すること。
・盛土の強度低下が生じると判定された場合、強度低下が生じない盛 土となるよう設計条件(盛土形状・盛土材料等)の変更を行うこと。
・やむを得ない事情がある場合に限り、表1-8-2により盛土材料に応じて、液状化や繰り返し載荷による盛土の強度低下を考慮した安定計算を実施すること。
隣接地(人家等)に重大な影響を及ぼすおそれがある場合には、より低い盛土高さであっても安定性の検討を求める場合がある。
・三次元解析(変形解析や浸透流解析等)により、二次元の安定計算モデルや計算結果(滑り面の発生位置等)の妥当性 について検証することが望ましい。
和歌山県とほとんど同じ

地震時の過剰間隙水圧と繰り返し載荷による強度低下の有無の判定

隣接地の影響の記載がある
3次元解析は2次元解析結果の妥当性検証に使うこと
 岡山県
令和7年4月
 第二編 技術的基準編 [PDFファイル/7.98MB]
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/976488_9406112_misc.pdf
・間げき水圧を考慮した安定計算を標準とする。
液状化判定(地震時の間げき水圧の上昇及び繰り返し載荷による盛土の強度低下の有無を判定)を実施し、強度低下が生じると判定された場合は、盛土の強度低下を考慮した安定計算を実施する
・ 盛土規模が大きく数多くのリスク要因(地盤・地下水・地震動等)が盛土の安定性に大きな影響を与えることになるため、三次元解析(変形解析や浸透流解析等)により二次元の安定計算モデルや計算結果(すべり面の発生位置等)の妥当性について検証する。
・三次元解析のための詳細な地質調査及び水文調査を追加で実施する。
 ・地震時の過剰間隙水圧と繰り返し載荷による強度低下の有無の判定
・強度低下する場合は、設計変更ではなくその条件で計算すること
3次元解析は2次元解析結果の妥当性検証に使うこと
・調査を追加実施
 島根県
未整備・準備中
 

宅地造成及び特定盛土等規制法に基づく許可申請等の手引き【技術編】・・・準備中

※許可申請された場合、工事の計画が盛土規制法施行令で定める技術的基準に適合しているかを審査することとなります。

 2025年12月時点で、まだ作成されていない(これ位じっくり準備するほうが良いかも)
 山口県
令和7年4月
 盛土ハンドブック(令和7年4月)設計編 (PDF:9.27MB)
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/206273.pdf
・二次元の安定計算に加え、三次元の変形解析や浸透流解析等(以下「三次元解析」という。)により多角的に検証を行うことが望ましい。
 『盛土等防災マニュアルの解説』のまま
 鳥取県
未整備
 鳥取県は令和3年12月24日に、鳥取県盛土等に係る斜面の安全確保に関する条例をいち早く制定した。これは同年7月の熱海市逢初川土石流災害を契機にしてのこと。この条例があるために、「盛土等防災マニュアル」制定後の技術基準の制定が遅れているようです。   2025年12月時点で、まだ作成されていない(これ位じっくり準備するほうが良いかも)
 愛媛県
令和7年8月
 宅地造成及び特定盛土等規制法 (盛土規制法)に基づく技術基準 第2版 令和7年8月
https://www.pref.ehime.jp/uploaded/attachment/155406.pdf

・渓流等においては、高さ15m超の盛土は間げき水圧を考慮した安定計算を標準とする。
・安定計算に当たっては盛土の下部又は側方からの浸透水による水圧(u)とし、必要に応じて、⾬水の浸透によって形成される地下水による地下水による間げき水圧及び盛土施工に伴って発生する過剰間げき水圧に考慮すること。
・十分締固めた盛土では液状化等による盛土の強度低下は生じにくいが、渓流等における⾼さ15m超の盛土や締固め難い材料を用いる盛土については液状化現象等を考慮し、液状化判定等を実施すること。
・盛土量5万m3を超える大規模な盛土は、二次元の安定計算に加え、三次元の変形解析や浸透流解析等により多角的に検証を行うことが望ましい
「少なくとも3次元浸透流解析がしてないと申請が受け付けられない」と指導されたとの情報あり。
→「望ましい」は行政用語では「しなくてよい」のはずだが、民間事業者が申請者の場合には「しなければならない」になるようである。
 基本的に『盛土等防災マニュアルの解説』通りである。

・ある申請者の情報では「少なくとも3次元浸透流解析が必要」との指導があったとのことである。
最も技術的に必要性がなく、かつ最も高価となる3次元浸透流解析を必須とする文言は技術基準の中にはないが、「指導」では必須だとのこと。

3次元浸透流解析の手順 
 3次元変形解析(FEM)、3次元安定解析(LEM)は、いずれも土質力学的解析で最終的に滑り面形状と安全率がアウトプットされる。土の強度も当然ばらつくが、パイプ流とマトリックス流(間隙流)のような極端な違いは存在しないので一定程度合理的な解析結果が期待される。一方、3次元浸透流解析はパイプ流とマトリックス流(間隙流)の盛土内の浸透性の極端な違いにより合理的な解析結果は期待できない(逢初川の最終報告書でもそのあたりのことが書かれている)。

しかし、新設盛土申請において規制当局が「3次元浸透流解析が必須」と指導したら、(1)必要ないことを申請者が規制当局に説明し納得を得るか、(2)そのまま従って3次元浸透流解析を実施するかの2つの選択肢しかない。

逢初川の委員会では、地下水位や河川流量調査などを実施していたので、パラメータを「調整(キャリブレーション)」することが原理的には可能(実際にはパイプ流が表現できないので不可能だったが)だが、新設盛土の場合には検証過程がなく「片押し計算」で、なんとなく計算結果が出るだけである。それでも規制当局が必要と言うならやるしか無い。
 

逢初川崩壊盛土の原因究明における浸透流解析

新設盛土の申請における浸透流解析

3次元浸透流解析は、境界条件の設定で、高い水頭から低い水頭に透水係数に応じ、ダルシー則どおりに地下水が地中を流下する現象をFEMにより計算することになる。境界部の地下水位設定と、浸出箇所の設定と、 年間で平均的にどの程度の降雨量が地表から地中に浸透するかを設定して、あとは「Compute」ボタンを押すだけである。
   
2 地盤内の湿潤状態の変化により、不透水境界と既知水頭境界を自動で切り替える境界条件
3 境界面を通過する流量値を一定値として規定する境界条件
4 河川、湖沼、海岸などの表面水が帯水層と自由に接触する境界で、水頭値を一定値として規定する条件
5 水の出入りがないものとして規定する境界条件
 
出典:逢初川土石流の発生原因調査 中間報告書(令和4年3月29日)
第6章 浸透流解析による崩落地への水の流動解析 より抜粋

https://www.pref.shizuoka.jp/bosaikinkyu/saigai/atamidosha/aizomegawasaigai/1047027/1029511.html

境界条件の設定方法は以下の通りである。
 (1) 山地の分水嶺(尾根部分)は、定流量境界(地下水の流入量はゼロ)とする。 →尾根部及び側面部の地下水位が必要(ボーリング調査)
 (2) 海領域は、定水位境界とする。 →谷部の地下水位が必要(ボーリング調査)
 (3) 底面は、不透水境界とする。 →調査不要
 (4) 地表面は、降雨浸透面として、浸透率を用いて降雨の浸透量を考慮する。→年間降水量と平均的な地下浸透※
 
※森林の蒸発散は年降水の約40〜60%(日本では約50%が代表値)、草原は概ね30〜60%、直接の表面流出は通常非常に小さく数%、地下浸透(再補給)は場所次第で概ね10〜40%程度、という目安。なお、砂地で降水が多ければ50%以上になることもあれば、粘土層や人工被覆でほとんど地下へ届かないこともある。
また、豪雨時にはソイルパイプから排出される地下水は全体の20〜90%(多くの森林斜面では典型的に30〜70%)で、マトリックス流は10〜80%である。強い集中豪雨や発達したソイルパイプ網があるとパイプ流が優勢となる。降雨が弱く土壌全体をゆっくり透過する場合はマトリックス流が優勢となる。また盛土施工直後にはソイルパイプが発達していないが、時間の経過によってソイルパイプが発達するようになるので、マトリックス流とパイプ流の比率は下記のように変化する。

施工直後(良く締固められた盛土):

 マトリックス流:80〜99%(ほとんど)
 ソイルパイプ流:1〜20%(微少)

1〜5年(植生定着・乾湿繰返しでマクロ孔隙が生じ始める):

 マトリックス流:60〜90%
 ソイルパイプ流:10〜40%(イベント時はもっと高くなる)

10年以上(自然化・動物活動・根腐食・凍結融解等でソイルパイプ網が発達):

 ストームごとの瞬間的寄与:ソイルパイプ20〜70%(サイト依存で幅大)
 年間水収支ベース:ソイルパイプ5〜30%、残りはマトリックス流

なお、渓流盛土は常時水が供給されるため、パイプ流の寄与は単独の陸上盛土より高くなりやすいことも考慮する必要がある。

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