本文へジャンプ土砂災害から命と財産を守る
傾斜地が崩れるということ

 傾斜地が崩れるのは「自然現象」です。斜面は降雨量や地殻の隆起量などと絶妙のバランスで存在しています。このため気象の変化、道路建設などによる沢の流量の変化、植林などによる植生状況の変化に対応して、新しいバランスへ移行します。その移行過程で浸食作用、すなわち山崩れが起きるのです。

 「何かが変化すれば、新しい地形バランスに移行する」ということさえ認識しておけば、斜面と人間は十分共存していけるのです。
 土砂災害は、上流部での斜面崩壊が誘起するものです。斜面崩壊は、地震で直接起きる場合もありますが、圧倒的に降雨で起きる場合が多いのです。逆に言えば降雨がなければほとんど発生するものではありません。

 土壌は森林を維持するために適当な量の水分が必要です。しかし、水がありすぎると「嘔吐」します。この嘔吐が斜面崩壊です。嘔吐が起きる場所は、良透水地盤と難透水地盤の境界部で起きることが多いです。たとえば難透水性の凝灰岩地盤の上に良透水地盤の溶岩がある場合など(南九州ではこのパターンが多いです)では、溶岩が水圧で吹き飛ばされて崩壊します。

土砂災害の例

土石流

上流部の崩壊が原因となって大規模な土石流が下流の集落を襲いました。水俣市の例。
源頭部の崩壊は、安山岩溶岩の崩壊でした。
斜面崩壊

傾斜地表層部の土砂が、大量の水とともに崩落し、斜面下の家屋を押しつぶしました。鹿児島県菱刈町の例。
上部には、細い谷を溶岩が埋めて、そこが地中の水路となり大量の水を供給していました。

盛土崩壊

高速道路の盛土構造物が豪雨で崩壊し、下の家屋を押しつぶしました。岩国町の例。
排水できないほどの水が盛土内に浸透したために発生したものです。

  
日本は、自然の豊かな国と一般に思われていますが、人工林(植林)の比率が高く、そこには天然林の持つ保全機能ほどのものはありません。戦後の拡大造林に伴って人工林は急速に増えましたので、いま「新しい地形バランス」への移行が始まっていると言っても良いと思います。近年起きる山腹からの崩壊・土石流は、予測することが難しい災害形態となっていますが、主に人工林で起きています。また、林道がつくことによって、沢に流入する表流水の量が増加し、沢はけなげにもその水を吐けるだけの断面になろうと努力します。自然が土を削る時には崩壊という形態になります。

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